コドモも〝打ち消し〟が苦手!?
2016/08/25
コドモが言うことを聞かないときや何故か意図を勘違いしているとき、もしかしたらあなたが伝えた言葉の中に『打ち消し』が含まれていたからかも知れません。
今回はある意味大人にもNGな言語表現方法『打ち消し』についてNLPや認知心理学の観点から考えてみようと思います。
■打ち消しとは?
先ず打ち消しの意味をご理解いただくため、コトバンクで調べたところ【大辞林第三版】にて以下のように説明してます。
うちけし【打ち消し・打消し】
①そうではないと言うこと。打ち消すこと。否定。
②文法で,動作・作用・存在・状態などを否定する意を表す言い方。口語では,助動詞「ない」「ぬ」「まい」,文語では助動詞「ず」「じ」「まじ」や助詞「で」などを付けて言い表す。
こちら難しく考えず、「①そうではないと言うこと。」と表現する方法だと覚えて下さい。
■こんな会話がありました?
そして打ち消しをご理解いただくため、簡単な我が家で起きた事例を紹介します。
【状況説明】
家族3人で食事をしている最中。
娘が何か必死に取り組んでいる最中、その必死の姿を見たママがフフっと笑ってしまった直後の会話です。
【会話】
・娘 :「バカにしないでよ!!」
・ママ:「バカにしてないよ?」
・娘 :(会話被せ気味で)「バカって言わないで!もう知らない!!」
その後部屋を出ていってしまった・・・。
この例ではママがとっさに言ったひとことが打ち消しです。
そして理子さんはバカと言われたと勘違いたことが原因で部屋を出ていったようです。
■心理学を使って事例分析
この事例、ただ単純に〝勘違い〟と〝早とちり〟をしたかのようにも見えます。
しかし注意深く会話と状況を洞察すると、この短い会話の中で色々な感情が動いていたことがわかります。
先ず、問題発生の起点はママが笑ったところで、私もその場に居たのですが、娘の頑張っている姿が可愛く思わず微笑んでしまうようなモノだったのできっと私も笑ってました。
そのため、ママは全く悪気なく確実にバカにはしてません。
しかし娘にしてみれば「真面目に取り組んでいる」「うまくできずに苦労している」「コドモだからできないと思われたくない」というような感情を抱いて焦っていたのかも知れません。
そんな心情の中で娘は〝笑われた〟と勘違いしたことが原因で「笑わないで!!」と発言したと推測できます。
その後、ママは直感で娘が勘違いしていると気づき「バカにしてないよ」と応答。
しかし娘にはママの発言の一部である〝バカ〟しか届かなかったことが原因で「バカって言わないで!もう知らない!!」という〝早とちり〟的な発言と行動に出たと考えられます。
■トラブル要因はなんた?
今回トラブルにおける最大の要因は「非言語のコミュニケーションエラー」であり、お互い適切な感情の言語化ができなかったことでお互いが勝手な解釈をしたことだと私は思いました。
あわせて、娘はの早とちりは〝バカ〟というフレーズ認知した後、条件反射的に娘の頭の中にある〝バカのイメージ〟が呼び起こされ感情がヒートアップした結果、部屋を飛び出したと私は推測しました。
この推測をもとに、今回のトラブルにおける原因を心理学観点で3つの事象にまとめました。
【事象1】打ち消しても消えない情報と感情
認知心理学において、一度入手した情報をその後打ち消しをしたとしても必ずアタマの中に残るとされております。
上の図でいうと①を覚えた後②で言葉で打ち消されても頭の中から消えない状態です。
つこちら簡単な例で例えると「〝真っ赤に熟したトマト〟という言葉を聞かなかったことにして、今すぐ忘れてください」と言われても覚えないことも忘れることも事実上できないということです。
「上の写真、見なかったことにして今すぐ完全忘れてくださーい!!」
これも無理なお願いですよね。
このように、大人でもコドモでも〝打ち消し〟において一度認知したことをすぐ忘れることはできません。
【事象2】ヒトは〝認知した情報〟を無意識に判断してしまう傾向がある。
こちらの事象について、先ず最初にコミュニケーション理論の復習です。
コミュニケーションにおける会話のキャッチボールでは【知識】【感情】【価値観】という3つの情報をやり取りしてます。
そして多くの人は受け取った情報について無意識&無条件に善悪や真偽、また既知か無知を判断します。
またこの無意識&無条件反応はヒトが問題なく生活する上で必要な生体反応であり、その反応は経験の数や知識量によって精度が変わってきます。
またこの事象を心理学では「ヒューリスティクス」と呼び、【必ず正しい答えを導けるわけではないが、ある程度のレベルで正解に近い解を得ることができる方法】として考える時間や労力を短縮する思考方法として日々の生活で使っている能力でもあります。
【事象3】コドモ特有の反応
コミュニケーションにおいて、コドモは大人に比べ【知識】と【価値観】が少ないため大人よりも判断を下す見極めが速いです。
また【感情】は大人以上に敏感であるからすぐに怒ったり泣いたりしてしまいます。
以上の3つの事象がゴドモとの短い些細な会話の中で絡み合い、大人には不可解な「打ち消しが通用しない状況」が生まれ、事例のようなトラブルが発生するという流れです。
また大人でも「頭に血が登る」とか「ついカッとなった」みないなトラブルも上記3つの事象で説明できますね。
今回のようなトラブルを避けるには、単純に打ち消しを極力使わないということが最短距離です。
あわせて今回紹介した【事象1~3】を頭の中にしっかりインストールして、日頃から少しでも意図的に打ち消しを使わないようにする心掛けが必要です。
また「バカ」というような【ネガティブなキーワード】を使わないようにすることも予防策の一つで、例えばゴドモが「バカと言わないで」という言われた場合、打ち消しを逆手にとり「偉い人ではないなんて言ってないよ」と切り返すなど機転を利かせることができればベストですね。
しかしそうは言っても難しいと思いますので、今回の事例では「そんなふうに思ったの?」「どこかそんな気持ちだと感じた?」みたいに感情に寄り添うことがエラーを防ぐ方法だったかも知れません。
■トラブルの結末
一応、お伝えしえおきます。
トラブル発生後、部屋を出て行った娘に私が寄り添い、全体の流れを分かりやすい言葉で整理して「ただの勘違いであること」また「誰も何も悪くない」ことを伝え一緒にリビングへ戻りました。
またママも理由はどうあれ、娘の気持ちを害したことへ謝罪し、娘も謝罪を受け入れお互いを承諾したところで元に戻りました。
また3人で勘違いの再発防止方法を考えたり、お互い今後バカにするような発言をしないなどの約束をして親子の絆が深まったと思います。
まぁ小競り合いなんてこんなモノですかね(笑)